ギャンブラー探偵、誕生!?
それは、とある地方出張での出来事であった。
オレは、後輩スタッフとともに、浮気をしている疑いのある対象者男性を追っていた。
相手は自宅からまだ出てきていない。車も家の駐車場に停まっていた。そこで張込み開始。
が、張り込める場所がない!
家の前は道が細くて無理。
様子をうかがうことができる通りは交通量が多くて駐車不可。
探偵、ピンチ。
と、同行していた後輩スタッフが、言った。
「あそこからならバッチリ駐車できますし、家の門も丸見えですよ!」
え、どこどこ?
おお、でかしたぞ、後輩! 冴えてるねぇ。
そこには、パチンコ店があったのだ。
まだオープン前だったので気づかなかったが、そこの駐車場は絶好の張込みポイントだった!
さっそく、車を駐車場へ、ススス~っと移動。監視をはじめたのであった。
しかし、停まってるのはオレらの車だけ。
パチンコ店はオープン前。すこぶる目立つ。けっこうマズイ。
でも、選択肢はない。居続けるしかなかったのだ。
と、そこへ1台の車がやってきた。広~い駐車場は、い~っぱいスペースが空いていた。
なのに、ナゼかオレらの車の横に駐車してきた。
イヤな予感。
こういうときの勘は当たるもの。
車から降りてきた男が、まっすぐ、こちらへ歩いてきた。コンコンコン!
「こちらの店に御用ですかねえ?私、ここの監視を任されてる者なんですけどね。」
「テレビ局の人間でして、報道取材に来てるんですけど、時間が空いたんで。そしたら、先輩がどうしてもパチンコやるってきかないもんですからね。道を走ってたら、こちらの店を見つけたんで、オープンまで待ってるんですよ。ね、先輩!」
気の利いた言い訳というよりは、けっこう苦しい弁解じゃない? それ。
「あ、そう。まあ、じゃあいいけど。ホントにお客さんなの?」
ホラみろ、全然、誤魔化せてないじゃん!
「ホントですよ! オープンまであと何分かでしょ? 先輩、もう少しで打てますよ!」
おいおい、オレに振るなって…。
「あ、ああ、早く打ちてぇ~なぁ~!」
合わせてみたものの、なんかぎこちない。
まあ、いいかといった感じで、訝しがりながらも、男は、いったん、車に戻っていった。
しかし、男の車は動かない!
オレたちのセリフを確かめようとしていたのだ。ヤバイ。そのとき、後輩が言った。
「打ってきてくださいよ。その間、オレが監視してますから」
おいおい、負けたらどうすんだよ。
経費でカバーするわけにはいかないし、自腹で勝負しなきゃなんないじゃん!
とはいえ、男の監視を逃れるためには、仕方ない状況。
クゥ~、行くしかないのか…。
こうして、オレは、パチンコ店に向かった。
男は車を降りてオレのあとについてきた。
イヤな野郎だねぇ、まったく!
これじゃ、中に入ってるだけじゃなく、ホントに打たなきゃなんないじゃん…。
まだ、オープン直後の閑散とした店内にオレは入っていった。
男もうしろから続く。
とりあえず、千円札を数枚、500円玉に両替し、適当な台を選んで席につく。オレの様子をうかがう男。
「はあ、やっと打てるよ。もうちょっと早く、オープンして欲しいよなあ!」
なんて言ってみせても、男はいっこうにオレの監視を止めない。
ああ、もう逃げられない…。こうなったら、マジに打つしかない。
できるだけゆっくり500円玉を交換機に入れる。
玉がジャラジャラ。ゲーム開始! あ、もうなくなっちゃった(汗)。
まったく当たる気配なく、5分で終了。
ちょっと待てよ?
このペースだと、1時間で6,000円も必要じゃん。
2時間粘ったら12,000円、
3時間に及んだら18,000円だよ?
どうする、オレ…。
2枚目の金を投入するとき、明らかにオレの手は震えていた。
しかし、これも5分足らずでパア。
「なんだよ、客が少ないのに設定渋いんじゃないの?」
1,000円ごときで何をがたがた抜かしてるんだと言わんばかりの男の目。
オレ、絶体絶命のピンチ。ど、どうすんのよ、オレ!
~次回へ続く~