コラム|飼い犬に手を噛まれる

飼い犬に手を噛まれる

もう、どうしようもない。ポチにはオレを見つけようという気さえうかがえない。
完全に見放されたオレ。しかし、この外人部隊を引き付けておいたからこそ、君は、無事に接触することができたんだよ。わかってるよね?
オレの犠牲があったからだって、ちゃんと理解しているよね?

ポチのトークは、冴えに冴えていた。対象者を紹介されて、ガチンコで話している。
対象者の表情は和らぎ、明らかに好感を持った顔つきでポチを見つめていた。

"HEY! WHERE ARE YOU LOOKING AT?"
<ちょっと、アンタ、どこ見てんの?>

え? ああ、もう許してよ、ガイジンさん…。

"OH , SORRY….WOULD YOU LIKE…"
<ああ、ゴメン、ゴメン…。よければ…>

"YHA! 3MORE SHOTS , PLEASE!"
<そうこなくっちゃ! ショット3杯、追加ね!>

完全なカモ状態。サポート参加は、もはや不可能。オレは人身御供になるほかなかった。ポチにすべてを任せて、こいつらの暴走を食い止め、邪魔をさせないようにせねば。対象者をナンパしようとしたガンジンたち、屈強な黒人、ギャル…。
総勢6人を相手に、玉砕戦法で切り抜けるしかなかった。
しかし、弾(金)切れ間近なところまで追い詰められていたオレ。
早く、早くをサポート終了してくれぇ~!
お、今回は、以心伝心! ポチに通じた!!

「これから、まだ仕事なんだよね。今度またゆっくり飲まない?」

順調に連絡先交換して、終了の気配。よし、こっちもそろそろ…。

"I ' M GANNA LEAVE NOW , SO , SEE YA !"
<そろそろ行かないと…。んじゃ!>

鬼ダッシュ! 階段を駆け上がり、張り込み部隊と合流した!はあ、怖かった…。 

ほどなくして、ポチも出てきた。かくして、波乱の接触サポートは無事(?)に成功。メインエージェントとなったポチは、意気揚々と事務所に報告を入れていた。

「はい。感触は良好です!フツーの友人関係でしたら、すぐにでもって感じです!」

ああ、そうだろうよ。オレのアシストが良かったんだからさ。

「もうひとりは、さまよってて対象者を見つけられなかったみたいで…」

ああ、裏切りやがった、この野郎!

『飼い犬に手を噛まれる』という諺の意味を痛感した六本木の夜であった…。


大阪ナニワのブルース

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