修行記|面取りの洗礼

面取りの洗礼

みなさん、お久しぶりです。
今夏も腹筋形成が間に合いそうもない久米です。

前回までは尾行の難しさについてアレコレ書いてみましたが、今回は対象者の "捕捉" に関するエピソードです。

通常、依頼人様からは対象者の容姿について細かな説明を聞くとともにできるだけ最近の写真をご提供いただきます。現像した写真ではなく写メでも構わないのですが、顔のアップと全身ショットが揃っているとありがたいですね。

初回の調査に入る時点では、当然ながらまだ実際の対象者を見たことがないわけですが、プロとして「見逃し」は許されません。どんなに人通りの多い場所だろうと、対象者がどんなに特徴に乏しい人だろうと、私たちは確実に捕捉してみせなければならないのです。

その捕捉の際に最も重要となるポイントが、当たり前ですが対象者の「顔」です。
髪型・輪郭・目鼻の特徴・眼鏡の有無・女性なら化粧の系統なども含めて、彼ら彼女らの顔を見て「この人!」とか「違う」とかを一瞬で判断する必要があります。

もちろん、顔以外の部分(体格・服装・歩き方など)も対象者の特定には有益ですが、チェックする順序はどうであれ、最終的な決め手となるのはやっぱり顔なのです。
そのように顔を見て判断し特定を目指すのが、"面取り" と呼ばれる作業です。

あれは秋も深まってきた頃だったでしょうか
――それまでは比較的スムーズに面取りを実行できていた私でしたが、ついに洗礼を浴びる時が来たのです。

洗礼とは……ずばり、マスクでした。

それまでは面取りの時に困る要素は眼鏡だけでした。
普段かけてない人が調査の時にたまたま眼鏡をかけていると、それだけで判断のレベルが上がってしまいます。特に、「眼鏡をかけることもある」という情報を事前に聞いていない場合はなおさらです。

が、マスクはその比ではありませんでした。
鼻から口にかけてが見えないと、こうも違うのか…!というほどに、別人といえばいいのかどうか、いや、別人かどうかも判別できない(?)ような不思議で見事な変貌を見せるのでした。

その日は同対象者の初回調査日だったのですが、頭に刷り込んでおいた顔写真のイメージがまったくと言っていいほど役に立ちませんでした。

そんな久米に向けて先輩たちは「髪型に頼るのもありだけど、対象者の髪型がそれほど特徴的じゃない場合は、頼れるのは"目"だよ」と教えてくれました。人の目には、一重・二重の違いをはじめとして、丸い目や切れ長の目、まつ毛の長短、眉毛とのバランス等々のような判別ポイントが多々あると言うのです。

確かに、その日事務所に帰ってから撮影画像をチェックしてみると、先輩たちの言うとおり次回以降に役立つ特徴が見て取れました。晴れて、これならマスクされてしまっても分かる、という自信が持てたのです。

以降、今年になってからも花粉症の時期を中心にマスクの対象者に多く当たりましたが、目の特徴をはじめとして判別のコツが身についてきて、今では「マスク慣れ」できました。

対象者が眼鏡をかけていようとマスクをつけていようと、もう平気です。
あと考えられるものといえば……カ○ラぐらいでしょうか。
あ、あれは常につけているハズか。

追跡の第一歩となる"捕捉"の部分で経験値が増え、その後は「尾行中の情報収集」に課題がシフトしていく久米なのでした。

ではまた次回、お会いしましょう!

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