コラム|探偵 VS 小さな泥棒

探偵 VS 小さな泥棒

街には枯れ葉が舞い、いつのまにか冬がそこまで忍び寄っている今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか?

収穫の秋・実りの秋では、恋を掴もうと想いを寄せる人へアプローチした人も多かったのではないでしょうか。

そんなハーベストな秋を象徴するかのような出来事がありました。

場所は関東某所。
山々を切り開いた新興住宅地の一角。
少しはずれると、土のにおいがたっぷりの畑も点在しています。

そこで、ターゲットの浮気相手を探るべく、家から少し離れたところに車をとめ、静かに刻をすごして(=張り込んで)おりました。

ターゲットの家の隣は広大な畑が続いています。ひと気のない、畑の隅には小さな掘っ立て小屋があります。

道行く人々は皆、その小屋の前で立ち止まり、なにやら視線を動かし、そして去っていきます。
中には乗用車を前に止め、わざわざ降りて来る人もいます。

  うぅ~、キニナル・・・。

なぜ立ち止まるのか、いったい何がいるのか?

推理では、

1.かわいいワンコがいる。
2.かわいいニャンコがいる。
3.かわいいツチノコがいる。
4.かわいいオンナのコのHな写真がある。

の、どれかとみた^^;

しかしわざわざ車を止めるのがどーも解せない。3か4ならわかるけど・・・。

そこで、ターゲットの家の様子を観察がてら、斥候へ。そして小屋の前で土谷も立ち止まりました。

見て納得。試してガッテン!なるほどねー、これは立ち止まるし、車で来るのもわかるわい…。

  そこには、野菜の無人販売機(?)があったのです。
いわゆる日本人の美徳が生み出した、アレです。

所狭しとムシロの上に野菜が並べられ、手製の値札がついている。まだ土のついた新鮮な野菜が、驚きのプライスで買えるのです。
そして小さなポストにお金を入れてくださいと書いてある。

人間の良心にせつせつと訴える、
心理的販売方法。
性善説を信じている者にしか許されない、
ヒューマニズム溢れる販売機。

そこにはしかし、

  盗めるものならやってみろ!

といわんばかりの無言の圧力が空間を支配しているのです。

柱には持ち主の名前が○○とひっそりと書かれています。○○さんはおそらくダンディな紳士なのでしょう。(勝手な想像)

なぞの小屋の確認を終え、戻ろうとしたその時、遠くでガチャっとドアの開く音が!

ターゲットの自宅のドアが半分開いてます。

慌てて、小屋の裏に回りこみ、様子をうかがう土谷。

するとターゲットがこちらに向かってきます。ヤツもこの激安野菜販売機の常連だったのか、マズイ…。

足音に耳をすませ、息を殺し、物陰からターゲットをうかがう土谷。

  うわぁぁっ、ちけぇぇー・・・。

しかしターゲットは土谷の方は見ずに、辺りをきょろきょろ見回しています。

そして次の瞬間、ポストを軽く揺すり、中の小銭の音を確認したあと、裏ブタをこじ開け、
100円玉とおぼしき銀貨を数枚取り出し、何食わぬ顔で裏ブタを元に戻したのです。

 (うおぃっ、なにしてんねん!ていうか、俺って犯罪シーンの目撃者じゃけん。しかも犯人がどこの誰か全部知っとるだべや…。でもここで捕まえるわけにはいかんばい。仕方が無いき、おとなしくしとるぜよ。)

  興奮のあまり何県民かわからぬ言葉が脳裏を横切りました。

そして土谷には気づかず、そのまま家の車庫に行くターゲット。無言の圧力にも屈しない、堂々たる後姿です。

足音を忍ばせ、獣ダッシュで車に戻ります。

探偵1号にすばやく乗り込みながら、ビデオカメラをすでに構えて撮影している所長に

 「車で出ますよ。ヤツはドロボー君ですよ。」

と意味不明の一言。

 「ダッシュで戻ってきたから車で出るとは思ってたけど、ドロボーってNANDA?」

と変わらずモニターを見ながら所長が聞きます。

 「いやぁ、ターゲットのヤツ、あの野菜売り場から小銭盗んでいきやしたぜ。あれは常習犯と見た。」

 「へぇー、いい歳して困ったチャンだな。お、出てきたぞ。」

話は一旦中断し、追尾にかかります。

ターゲットは途中コンビニに寄って、タバコを購入。くすねたコインはおそらくタバコ代に化けた模様・・・。

そしてしばらく県道を走らせ、ファミレスに入店。浮気相手と待ち合わせしていたのです。
ほっと一息です。

  それにしても、泥棒はいかんですよ。

     盗むのはココロだけにして

なんちって・・・。

  おそまつでした。

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