コラム|下天のうちをくらぶれば…(後編)

下天のうちをくらぶれば…(後編)

最初の入りは取材工作から、です。なんといっても芸能系ですから。

女性記者&カメラマンの最強コンビで正々堂々とアポ取りです。
事務所側の売り出したいという思惑も絡み、需要と供給の合致を試みたのです。
「これからの一押しアイドル特集」というキャッチで、あっさり一発OKをいただきました。

そして当日。

小さなプロダクションのせいか、忙しそうなマネージャーが最初に形だけの同席。
こっちにとっては願ったり叶ったりのありがたい話です。

もちろん不審をいだかれないように通常の取材をキッチリ、サクッと行います。
カメラマンも本物ですから、当然のごとくバシャバシャ写真取りまくり。

お決まりの質問のあとに徐々に雰囲気を作り、仲良くなっていきます。女性同士という気安さもあり、携帯・メアド交換はクリア。

「また追加取材もしたいから、どっかでご飯食べながら話そうよ。 このまえグルメ取材やったから、おいしいところ知ってるんだ。(小声で)しかも経費で落ちるし…。」

女性記者が駄目押しの食べ物&ロハで釣り上げます。

「マジでぇー、行きたい行きたいっ!」

と素敵なお答え。

うーむ、色気より食い気ってか。

取材後にメールでのやりとりを繰り返し、一緒に食事。こうやってプライベート的にも仲良くなっていき、聞き出しを進めていくワケなんですね。

まずはお互いの悩み打ち明け合戦から開始。

彼女の悩みは・・・、

仕事をこのまま続けることに迷っている。
給料はかなり安くて、かつかつ生活で辛い。
相談する相手もいなくて寂しい。

…と、アイドルも一見華やかに見えて、内実大変なご様子。

そして、聞かなきゃMAXの彼氏情報にも触れていく工作員。

判明したことは・・・、

仕事だ、レッスンだ、と忙しく、
なかなか男性との出会いってありそうで、ないらしい。

好みの男性は男くさい人。
強引さと頼もしさが同居するリーダータイプがいいらしい。
嫌いなタイプは遊び人。
軽~いノリといい加減さが合体するお調子者タイプがダメらしい。

などなど。

さらには、

「いいなぁーって想う人は何人かいたけど、やっぱりそういう人はみんな恋人がいてサ・・。
恋人がいると引いちゃうタイプなんだよねー。
誰かいい人いないかなぁ?」

なんていう言葉を彼女から引き出し、だったら今度合コンとかしてみる?という誘いへと繋げていったのです。

「合コン? マジでマジで? 超ひさびさって感じぃー。」

と、話はトントン拍子にすすんじゃいました…。

ここまできたら、後はセッティングだけ。
ちょいと小じゃれたお店をチョイスして、

  『ドキッ!工作員だらけの合コン工作 』

はじまりはじまり、です。

緊張気味の依頼人様を励まし、言葉足らないところを補い、男らしいエピソード(打ち合わせ済み)を披露したり、と

  そりゃもう大騒ぎデス。

男性工作員は軽いテイストで統一。
光と影のコントラストのごとく、依頼人様を浮かび上がらせます。
但し、あまり行き過ぎない程度に抑え、リアリティを演出。

まず土谷は天性の(?)能天気キャラ炸裂で、盛り上げ役をこなしつつ彼女の嫌いなタイプへとダイビングしていきます。
次にイケメン系の先輩が自分の彼女の相談話をし始め、この時点でターゲットの標的からスルっとアウトしていきます。

そーすると・・・、
最後には彼しかいないアルヨ。

人間の心なんて、ほんの些細なことで揺れ動くもの。そのわずかなきっかけを作り出せれば、前に進めるんです。

ところが、ここで思いもかけぬ展開へと進んでしまうのです!

お決まりのトイレタイムに男性陣は綿密な打ち合わせ。
あーだ、こーだ言いながら、テンションそのままに土谷が軽く
「どーですか?彼女は?」
と聞くと、

「なんかイメージと違って・・・・。」

「えぇっ!?」
「なんですとっ!?」

土谷と先輩はハモることなく、声をあげてしまいました。

ナント彼の方が、気持ちの盛り上がり具合が、「日光の手前」だと言い始めたのです。
※今市=イマイチ これ以上説明させないで(泣)

   ここまでして、ここまでして、そう来ますかぁーーー!!!

「まあなんか今日はいい思い出ができたって感じかな。」

「・・・。」
「・・・。」

今度は無言のハモリで答えてしまいました。

  心変わりはあるもの。
心変わりはあるもの。

  忘れちゃいけません。

月記メニューに戻る